DIG社会保険労務士法人の社労士ブログ

2026.02.13

「もし、従業員が通勤中に事故に遭ったら」労災保険の適用や手続きについて解説|DIG社会保険労務士法人

こんにちは。福岡市にありますDIG社会保険労務士法人(旧:社会保険労務士法人アーリークロス)です。

今ではリモートワークが浸透し、基本的に通勤が必要のない方も増えていますが、会社が想定しておくべきことの一つとして、従業員の通勤中の事故が挙げられます。

本記事では、企業の労務担当者・経営者の方向けに、通勤災害の認定要件、労災保険の給付内容、申請手続きの流れ、そして企業として注意すべきポイントを解説します。

通勤中の事故は労災保険の対象となる可能性がある

まずは冷静に状況確認と社内共有を

従業員から「通勤途中で事故に遭った」との連絡を受けた場合、まずは通勤災害として労災保険の対象となる可能性があることを念頭に置き、冷静に対応することが重要です。

負傷者がいる場合は人命の安全を最優先とし、必要に応じて救急要請や警察への届出を行うよう案内します。交通事故の場合、加害者・被害者いずれの立場であっても警察への届出が必要となるのが一般的です。

その後、会社としては次の事項を正確に把握し、社内で情報を共有しておきましょう。これらの情報は、後の労災申請や事実確認の際に不可欠となります。

  • ・事故発生日時
  • ・発生場所
  • ・通勤経路・状況
  • ・相手方の有無

そもそも通勤災害とは?

労災認定される「通勤」の3つの要件

労災保険における労働災害は、「業務災害」と「通勤災害」の2種類に分かれます。通勤災害とは、労働者が通勤によって被った負傷・疾病・障害または死亡を指します。

単に「通勤中に起きた事故」であれば自動的に労災認定されるわけではなく、労災保険法上の「通勤」に該当するかどうかが判断のポイントとなります。

労災保険上、「通勤」とは就業に関し、以下(A)から(C)の移動を、合理的な経路および方法で行うことをいい(業務の性質を有するものを除く)とされています。

  • ・(A)住居と就業の場所との間の往復
  • ・(B)就業の場所から他の就業の場所への移動
  • ・(C)単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動

移動の経路を逸脱し、または中断した場合には、逸脱または中断の間およびその後の移動は「通勤」とはなりません。
ただし、例外的に認められた行為で逸脱または中断した場合には、その後の移動は「通勤」となることがあります。

通勤災害と認められるためには、その前提として、以上の(A)~(C)で示した移動が、労災保険法における通勤の要件を満たしている必要があります。
なお、会社に届け出ていた通勤経路と異なる経路での事故であっても、それが「合理的な経路および方法」であれば、通勤災害に該当する場合があります。

※参照:通勤災害について|東京労働局

通勤災害で受けられる労災保険の給付内容

通勤災害にあった場合に受けられる労災給付にはどのようなものがあるのでしょうか。主な給付は次のとおりです。

  • ・療養給付
  • ・休業給付
  • ・障害給付
  • ・遺族給付
  • ・葬祭給付
  • ・傷病年金
  • ・介護給付

このうち、ケガなどが治るまで従業員が無料で治療等を受けることができる給付が「療養給付」です。病院や整骨院などで「労災保険適用」などと表示があるのは、この療養給付に関連しています。

通勤災害にもかかわらず給付の存在を知らずに医療費を支払ってしまった場合は、後から精算となることがあります。

労災の申請手続きについて

労災の給付請求書は事故にあった従業員や遺族が作成・提出することが原則ですが、基本的には会社が窓口となって手続きを進める事例が多いです。。

会社としては、次の対応を適切に行い、手続きが円滑に進むよう配慮することが望まれます。

  • ・事故状況の確認
  • ・事業主証明の作成
  • ・必要書類の案内

給付の種類によって必要書類や証明内容が異なるため、事前に整理しておくことが重要です。

【パターン解説】従業員が通勤中に事故にあい、ケガを負った場合

通勤災害と一口に言っても様々なケースがあります。
ここでは、「従業員が徒歩で会社へ向かう途中、別の人が運転する自転車に衝突されてケガをした」というケースを例に会社の対応を考えてみましょう。

まず、前提として、通勤中に事故が起きた場合、速やかな対応が求められるため、日頃から従業員に何かあったらすぐに報告することを周知しておくことが大切です。

①報告を受ける、病院の受診
従業員から報告を受けたら、労災指定病院での早めの受診を促しましょう。
労災指定病院は厚生労働省のHP(参照:https://rousai-kensaku.mhlw.go.jp/)で調べることができます。

通勤災害にあった場合、労災指定病院であれば受診の際に治療費を支払う必要がありません。
もし通勤災害(労災)なのに健康保険を利用した場合、労災に切り替える手続きが煩雑になるためご注意ください。

②給付請求書・第三者行為災害届の作成、提出
本ケースでは療養給付たる療養の給付請求書(様式16号の3)、また自転車でぶつかってきた第三者(※)がいるため、第三者行為災害届の作成も必要です。
※「第三者」とは、その災害に関する労災保険関係の当事者(政府、事業主および
労災保険の受給権者)以外の者をいいます。

通勤災害の対応で企業が知っておきたい注意点

通勤災害への対応を誤ると、労務トラブルや企業リスクにつながる可能性があります。ここでは、企業側が特に留意すべきポイントを整理します。

会社が労災申請に消極的な対応を取ることは適切ではない

労災保険の利用は、労働者の正当な権利です。事業主証明が必要な書類が多いため、企業の協力は不可欠ですが、仮に会社が証明に消極的な姿勢を示した場合でも、労働者は労災申請を行うことができます。

事業主の証明が得られない場合でも、労働基準監督署が事実関係を確認したうえで申請を受理することがあります。企業としては、不必要なトラブルを避けるためにも、制度を正しく理解し、適切に対応することが重要です。

事故後の早期受診は労災認定上も重要

事故直後は症状が軽く見えても、後から痛みや不調が出るケースは少なくありません。事故と傷病との因果関係を明確にするためにも、速やかに医療機関を受診し、医師の診断を受けることが重要です。

企業としても、従業員に対し「早期受診」を促すことは、労災認定や後のトラブル防止の観点から有効です。

加害者がいる事故では自賠責保険との調整が必要

通勤中の交通事故で第三者が加害者となる場合、労災保険と自賠責保険の両方が関係します。同一の損害について二重に補償を受けることはできませんが、どちらの制度を先に利用するかは選択できます。

実務上は労災保険を先行利用するケースが多いものの、事故の内容や補償状況によって最適な対応は異なります。企業としても、必要に応じて専門家と連携しながら対応方針を検討することが望まれます。

まとめ

従業員が通勤中に事故に遭った場合、その状況によっては通勤災害として労災保険の適用を受けることができます。通勤災害と認定されるためには、「業務との関連性」「住居と就業場所の往復」「合理的な経路・方法」という要件を満たす必要があります。

企業としては、事故発生時の初動対応、事実確認、労災手続きへの適切な協力が重要です。

もしもの時に慌てず落ち着いて対応するためにも、日ごろから気軽に相談できる相手がいると安心ですね。労務管理についてお困りごとがありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

▼お問い合わせはこちら

お問い合わせ | DIG社会保険労務士法人

参照URL

労災保険給付の概要(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-12.pdf

第三者行為災害のしおり(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040324-10.pdf

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