DIG社会保険労務士法人の社労士ブログ
こんにちは。福岡市の DIG社会保険労務士法人(旧:社会保険労務士法人アーリークロス) です。
今回は、近年相談の増えている「休職規程」について解説します。
うつ病や適応障害など、精神疾患による私傷病休職は年々増加しています。インフルエンザの長期化や慢性疾患なども含め、休職対応は個別性が強く、明確なルールがなければ企業・従業員双方に混乱が生じやすい分野です。
休職規程とは?
業務外の病気やけがで働けなくなった従業員に対し、退職させずに一定期間職務を免除する制度を「休職」といいます。
その内容を明確に定めたものが「休職規程」です。主な記載項目は次のとおりです。
・休職の事由や種類
・休職期間・延長の上限
・休職中の給与・社会保険料等の取扱い
・復職手続(トライアル復職など)
・期間満了後の取扱い
こうした規程があることで、対応の迷いやトラブルを防ぎ、従業員にも安心感を与えられます。
では、休職制度は必ず設けなければならないのでしょうか?
答えは「義務ではない」が「実務上ほぼ必須」です。
長期療養の可能性は誰にでもあります。一方で、制度がなければ「退職扱い」となり、トラブルにつながる可能性もあります。また、人材確保の観点からも、制度が整っていないと求職者に判断される可能性があり、マイナスに働いてしまいます。福利厚生や制度の充実が就職先を決めるポイントとして重視されている今、整備の必要性は高まっています。
休職発令までの手順と会社の対応
従業員から「体調不良で休みたい」と申し出があった場合、以下の手順で進めましょう。
1.診断書の提出依頼
主治医の診断書で休職の必要性を確認。場合により、会社指定医の意見を求めることもあります。
2.休職条件の確認
- 給与の有無
- 無給時の社会保険料・住民税の取扱い(振込方法など)
- 業務引継ぎと連絡手段の確認
- 月1回の面談ルール設定(病状や復職可否を確認)
3.休職命令書の発行
休職理由・期間を明記し、本人の確認と合意を得ます。
4.傷病手当金の案内
無給期間中は健康保険の「傷病手当金」が利用可能です。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r124/
※申請書について健康保険組合に加入されている場合は、加入先の組合までお尋ねください。
5.社内対応と情報管理
休職者の業務分担や情報保護のルールを明確にする必要があります。
復職時の対応
では、休職期間が終わり復職のタイミングの会社の対応手順はというと、以下のとおりとなります
1.休職者の復職の意思表示を確認する
本人から復職希望を受け、休職規程に定めた方法(書面等)で正式に申出を受理します。
2.医師の診断書提出
医師の診断書を提出してもらい、主治医が「就労可能」と診断を出しているかを確認します。
3.会社による復職可否判断
業務内容・勤務時間・職場環境などを踏まえ、「従前の業務に支障なく復帰できるか」を
会社側で判断します。
もし、医師が「軽作業なら可」等と書いている場合は、柔軟な配置転換をすることも可能です。
4.トライアル復職の実施
本格的に復職する前に、短時間勤務や試し出社をする等して段階的に復職に持っていく方法が効果的です。
5.正式復職or延長判断
以上のステップを踏まえ、上司や人事、ご本人と面談を行い、継続勤務が可能かを確認します。
困難な場合は休職期間の延長、又は自然退職を検討します。
休職期間中の配慮
休職者への配慮
無理に復職を促すことは避け、病状に応じた面談時間や連絡頻度を設定しましょう。
在職者への配慮
業務負担が偏らないよう、協力体制への感謝や評価制度での反映も有効です。
メンタルヘルス教育
特に精神疾患による休職では、周囲の理解不足が復職を妨げることがあります。
「休職中に外出している=回復している」と誤解されるケースも。治療方針を理解し、偏見を防ぐための社内研修を実施しましょう。
まとめ
私傷病休職は、ルールが整っていればスムーズに対応できます。
発生してから慌てるのではなく、「備える」ことが予防労務の第一歩です。
DIG社会保険労務士法人では、休職規程や就業規則の作成・改定支援を通じて、企業の安心と働く人の安全を両立する体制づくりをお手伝いしています。
私傷病による休職に備え、制度整備と人への配慮を見直してみませんか。
